NoobowSystems Lab.

Radio Restoration Projects

SideBand Engineers Model 34
SBE "SB-34"

Bilateral Amateur Radio Transceiver
(1966)

English Page

SB-34 Prototype

SideBand Engineers - The Company

Overview

    SideBand Engineers SB-34は、1966年製のHF帯 SSBトランシーバです。 米国では現在でもそれなりの数が現存しているとはいえ、さほど高い評価を得ていたわけでもなく、 いわば"Interesting Radio" の部類に入るでしょう。 つまり風変わりで興味深くはあるものの、かといってコリンズやドレーク、 またはハリクラフターズのような人気を得ているわけではありません。 が、その設計を知れば知るほど、この無線機がいかに時代を先取りしていたかがわかってきます。

    SB-34はその前身である SB-33 のコンセプトを維持しつつ、スタイルを一新し、大きく改良を加えたものになっています。 SB-34は、ファイナルとドライブ段を除いて全てトランジスタとダイオードで構成されており、 AC117VとDC12Vのどちらでも動作する電源装置を本体に内蔵しています (SB-33ではモービル運用のためのインバータは別体オプションでした)。 トランジスタ化によるコンパクトな匡体とあいまって、モービル運用に適したものに仕上がっています。 モードはSSBのみで、3.8/7/14/21MHz帯をカバーします。送信出力は80Wとなっています。

    SB-34の特徴は、何といってもあのコリンズ社製メカニカル・フィルターを採用していることと、 バイラテラル方式の回路構成にあります。 バイラテラル方式とは、 ブロック・ダイヤグラム をご覧いただければわかるように、送信時と受信時で信号の流れが逆向きになるような構成です。 これにより、回路の多くが送受信で共用でき、部品点数削減によるコストダウンと軽量コンパクト化が実現されています。


Controls

    SB-34のコントロールを見てみましょう。 SB-33と比較すると、基本的なレイアウトは踏襲されていることがわかります。 おそらくモービル運用での操作性が重視されたのでしょう、 使用頻度の高いコントロールはパネル左側に配置されていて、 助手席に設置した際に運転席から操作しやすくなっています。

周波数ダイヤル(VFO)

    パネル左上の目盛りとつまみがVFOで、送受信周波数を設定します。 つまみと目盛り盤は同心で、おそらくジャクソン・ブラザーズ社製の(もしそうでなければ同様の) 同軸ボールジョイントで減速され、VFOの小型3連バリコンを回します。 ボールジョイントは2段減速で、つまみの約4分の3回転の範囲では微調整で、 それ以上の範囲では早送りになります。

    周波数可変範囲は以下のようです。
  • 80M :  3.775MHz - 4.025MHz
  • 40M :  7.050MHz - 7.300MHz
  • 20M : 14.100MHz - 14.350MHz
  • 15M : 21.200MHz - 21.450MHz



   
BAND SELECTOR

    パネル中央、メータのすぐ下のつまみです。 約330度回転し、これで運用するバンドを切り替え、また高周波段の同調を行います。 このつまみはギア減速されて3連バリコンを回すほか、ジニーバ・メカニズム(スイスのジュネーブですね。) と呼ばれるカム機構でバンド切り替えロータリー・スイッチを回し、同時に3本の同調用コイルのコア位置を切り替えます。

METER

    パネル中央のメータは送信時のみ動作し、 ファイナルのプレート電流やRF出力を表示します。 小型の目盛り盤には0から5までの数字がふられているのみで、 したがってプレート電流の実際の値を知ることはできません。
    実用面において本機の最大の短所は、Sメータがないということでしょう。 ここにメータはついているのだから、これをSメータとして使えたらなあと誰しも思うのではないでしょうか。 メータには照明はありません。

DIAL CORRECT

    パネル上側、メータの左側のつまみです。 VFOつまみ固定のまま送受信の両方に対して周波数を微調整できます。 このつまみで、メインのダイヤルが正しい周波数を示すよう調整します。 これを行うためには、あらかじめ周波数が正確にわかっている電波を受信するか、 あるいはオプションで用意されているクリスタル・マーカを使用します。

MIC GAIN

    パネル上側、メータの右側のつまみです。 送信時のマイクゲインを調整します。 マイクアンプにはAGCはないので、過変調にならないようゲインの上げすぎには注意しなくてはなりません。 オペレーション・マニュアルには、交信している局から変調レポートをもらって、 自分のマイクと声の大きさに見合ったポジションを見つけるように、と書かれています。



VOLUME

    パネル左下のつまみで、電源スイッチ共用です。 一番反時計の位置で電源OFF。時計方向に回すと受信音量が大きくなります。
    この一見変哲のないボリュームつまみ、実はSB-34の風変わりな部分のひとつです。 何しろこれ一つでAFゲイン、IFゲイン、RFゲインそれにAGCリミッタまでもコントロールしているのです。

PITCH

    パネル左下のスライド・スイッチとそのすぐ右側のつまみは、今で言うRITです。 スライド・スイッチをONにすると、受信周波数のみ、PITCHつまみで微調できます。




USB/LSB

    パネル中央に4つ並んだスライド・スイッチの一番左側です。USBとLSBを切り替えます。

CAL/ON

    ほぼ真ん中やや左側のスイッチは、 オプションで提供されていた外付けクリスタル・キャリブレータ・ユニットのON/OFFスイッチです。 実はただ単に、クリスタル・キャリブレータ・ユニットへの電源供給をON/OFFしているだけです。

XMTR/ON

    ほぼ真ん中やや右側のスイッチで、 これでDC12V電源での動作時に、 送信用ドライブ段とファイナルの真空管への電力供給をヒーター・プレート電源とも止めることができます。 これにより受信待機時の消費電流を約600mAに押さえることができ、カーバッテリーの消耗を低減できます。 AC117V動作時にはこのスイッチは働かず、ドライバとファイナルの真空管は常に通電しています。

OPER/TUNE

    パネル中央に4つ並んだスライド・スイッチの一番右側です。 TUNEにすると連続キャリア送信状態となり、この間にファイナルの同調をとります。 フロントパネル中央下部に見えるのはコリンズタイプのマイクジャックです。



PA LOAD

    送信機ファイナルのロード調整つまみです。

METER ANT/Ip

    パネル右下のスライドスイッチは、送信時にメータをRF出力表示/プレート電流表示に切り替えます。

PA TUNE

    パネル右下のつまみで、ファイナルの同調を取ります。これは受信時にも有効です。




Layout

    SB-34の内部構造を見てみましょう。 外側金属ケースは筒型の一体式で、内部は基本的にスチール製のフレームにいくつかのプリント基板が取り付く構造になっています。




回路構成


    ブロック図を見ると、そのユニークなバイラテラル方式がわかります。 黄色で示したブロックは送信時と受信時のいずれの場合にも機能するものです。

    送受信切替えは、2本の制御信号によって行われます。 一方のラインの電圧は受信時に高く、他方の線は低くなっています。 送信時は電圧レベルが反転します。 一方のラインは送信時に受信専用ブロックを停止させ、 他方のラインは受信時に送信専用ブロックを停止させる役目を持っています。 この送受信切替え方式により、リレーを使う必要がなくなりました。



高周波増幅段

    アンテナからの信号は送信機のパイマッチセクションを通り、 シャーシ下面に配置されたチューナーボードに入ります。 過大入力から初段を保護するため、ここは2本のダイオードが用意されています。 信号は高周波増幅用トランジスタQ11のエミッタに加えられます。 このトランジスタはコモン・ベース・アンプ動作します。

HFミキサ

    高周波増幅された信号はQ9とQ10とからなるHFミキサに入ります。 一方Q19で構成されるHFオシレータは各バンドに応じた局部周波数を発振しており、 HFミキサの出力として3175から3425kHzの信号が得られます。

    写真に見えるのはクリスタル・ボードです。 シャーシ下側にあり、 4つのHFオシレータ用水晶発振子(各バンドに1つずつ)とトランジスタQ19(隠れています)が実装されています。




VFOミキサ

    HFミキサの出力はチューナーボードを出てVFOボードに入り、 VFOミキサ用トランジスタQ7とQ8に印加されます。 一方VFOオシレータQ15はダイヤル位置に応じて5456.9から5706.9kHzの間の周波数を発振しており、 VFOバッファQ14を介してVFO周波数をVFOミキサに注入します。
    ヘテロダイン処理の結果、VFOミキサからは入力とVFOの差の周波数である2281.9kHzの信号が取り出されます。

中間周波数ミキサ

    2281.9kHzの信号はVFOボードを出て、ミキサ用ダイオードを通じてIFボードに入ります。 IFボードには456kHzの水晶発振回路Q12(キャリア・オシレータ)と、 それにつづくダブラー、それにダブラー・トリプラーQ13があり、USBモードの時は2738.2kHz(456kHzの6倍)、 LSBモードの時は1825.5kHz(456kHzの4倍)が発振されています。 この基準周波数信号はミキサ用ダイオードに印加され、 結果としてミキサ ダイオードから456.38kHzの中間周波数信号が取り出されます。




メカニカル・フィルタと中間周波数増幅

    456kHzの中間周波数信号はコリンズ製のメカニカル・フィルタを通り、 中間周波数増幅段Q5とQ6に印加されます。 バイラテラル構成のため、このフィルタは受信時ばかりではなく送信時にも使用されます (送信時と受信時では信号の流れる向きが反対になります)。

    コリンズ メカニカル・フィルタはトランジスタソケット2つを用いて、IFボード上に実装されています。 脱落防止のため、L型の金具で押さえられています(写真では取り付けネジを緩めてあります)。

リング・モジュレータ

    中間周波数信号はついでダイオード4本からなるリング・モジュレータに加えられます。 ここにはキャリア・オシレータからの456kHzもまた印加されていて、音声信号が復調されます。





低周波増幅

    リング・モジュレータで得られた音声信号は初段低周波増幅器Q2のベースに加えられて増幅されます。
    Q2のコレクタから取り出された信号はオーディオ・ドライバQ1で再び増幅されます。
    Q1の出力は、背面パネルに取り付けられたオーディオ・パワーアンプQ20に加えられます。 パワーアンプは出力トランスを有するA級アンプで、これによりフロントパネルに取り付けられたスピーカを駆動します。

ボリューム・コントロール

    通常の受信機のボリューム・コントロールはオーディオ・アンプの入力レベルを下げる、 いわゆるアッテネータとして実装されていますが、 本機のボリューム・コントロールはまさに受信機全体のゲイン・コントロールです。
    ボリューム・コントロールつまみはHFミキサ、456kHzアンプそしてわずかながら初段低周波増幅段のゲインを制御します。 他のステージはAGC電圧がない限りフルゲインで動作します。 ボリューム・コントロールのポテンショメータは電源電圧DC12Vを分圧してゲイン制御電圧を作っており、 この電圧が制御対象のトランジスタのベース電圧を変化させます。

AGC

    本機のAGCはスピーカ電圧を基準にしたオーディオ・デリバード方式です。 スピーカ両端の電圧がAGCトランジスタQ3に加えられており、 受信音が大きくなるとトランジスタQ3のコレクタ・エミッタ間が導通するようになります。 無信号時にQ3のコレクタ電圧はほぼ電源電圧と同じ12Vですが、受信音が大きくなるにつれて次第に電圧が下がります。
こうして得られたAGC電圧は高周波増幅段のQ11と中間周波増幅段Q5およびQ6に加えられ、 それらのステージのゲインを落とします。
    AGC電圧配分は、並程度の信号受信時でも高周波増幅トランジスタをかなりカットオフするよう設定されており、 これによって以下のステージがオーバーロードしないようになっています。
    入力信号が弱くなると、AGC電圧は比較的ゆっくりと12Vにまで回復し、したがって受信機がフルゲイン状態に戻ります。
    ボリューム・コントロールを50%以上に上げると、 AGCトランジスタに接続されたダイオードがスピーカ電圧をクリップしはじめ、 したがってAGCトランジスタの入力が低くなります。 これによりAGCの効きが下がり、より大きな音量が得られるようになります。 ボリューム・コントロールをフルにすると、AGCトランジスタの入力は完全にクランプされ、 音量に関わらず全段がフルゲインで動作するようになります。

特殊な構成

    このような特殊なAGCとボリューム・コントロールの構成は、本機に明らかな欠陥をもたらしてしまっています。


バンド切替機構

    バンド切替は、機構面において本機の最大の特徴になっています。 このつまみは約330度回転し、これで運用するバンドを切り替え、また高周波段の同調を行います。 このつまみはギア減速されて3連バリコンを回すほか、ジニーバ・メカニズム(スイスのジュネーブですね。) と呼ばれるカム機構でバンド切り替えロータリー・スイッチを回し、 同時に3本の同調用コイルのコア位置を切り替えます。

    たとえば20M帯で運用するときは時計の時針にして9時から11時30分程度の範囲内 (この範囲内ではつまみはバリコンを回すだけで、軽く操作できます)で、 受信感度が最高になる位置にあわせます。
    40Mに切り替えるときは、つまみを12時から2時30分の範囲内にあわせます。 つまみを各バンドの範囲内を超えて回そうとすると手応えが重くなり、 このときバンド切り替えのロータリースイッチが切り替わり、 同時にコイルのコア位置が切り替わります。 容易に想像できるように、バンド切り替え時にはかなりの操作力が必要です。 そのためつまみには小さなつば状の突起が設けられていて、力が入れやすいようになっています。

    この機構により、あるバンドに設定したときに同調コイルのコアはそのバンド用の位置となり、 またバリコン位置はそのバンド用の範囲内を超えて調整できないため、 ユーザがうっかりハーモニック共振に合わせてしまうことを防止しています。



送信機出力セクション

    スピーカのすぐ裏が送信機の出力セクションになっています。 ここは高電圧セクションのため、金網によるグリルでガードされています。 真空管は水平に配置されています。空冷のための特別な仕組みはなく、自然空冷方式になっています。

    写真ではガードグリルは外してあります。写真でスピーカ ヨークの少し上あたりに見える水平に置かれたコイルは、 TVI抑圧用のコイル。



SB-34で使用されているトランジスタ

SB-34 Desig. Usage Transistor Manufacturer Type Substitution Information
Q1 AF Driver 2N2431
PNP Alloy ACY33, AC128,AC138H, AC138, AC139K,AC139, AC142H,AC142H-K,AC142K,AC142, AC153K, AC153, NKT281 AL/1
Q2 AF AMP 2N3638(2N1305)
PNP Alloy BC126,BSX40, S1829, TQ63A, TQ63, 2N2927 A/1
Q3 AGC AMP 2N3642(2N2926) (GE) NPN Silicon

Q4 MIC AMP 2N3638(2N1305)
PNP Alloy

Q5 IF Amp, TX 2N2672 Amperex PADT

Q6 IF Amp, RX 2N2672 Amperex PADT

Q7 VFO Mixer, TX 2N2672 Amperex PADT

Q8 VFO Mixer, RX 2N2672 Amperex PADT

Q9 RF Mixer, TX 2N2672 Amperex PADT

Q10 RF Mixer, RX 2N2495 Amperex PADT SUBST: NTE160
TO72 T-PNP, Germanium for RF-IF Amplifier, FM MIxer/OSC
Vcbo 30V, Vces -20V, Vebo -0.3V, Ic 10mA, Pd 100mW, hFE 50 typ, fT 550MHz typ

Q11 RF AMP 2N2672 Amperex PADT

Q12 456kHz LOC OSC 2N2672 Amperex PADT

Q13 456kHz DBLR/TRPLR 2N2672 Amperex PADT

Q14 VFO Buffer 2N2672 Amperex PADT

Q15 VFO OSC 2N3564(2N706) (RCA) NPN Silicon

Q16 Keyer, RX Bus 2N3462(386-7185P1) (Raytheon) NPN Alloy

Q17 Keyer, TX Bus 2N3462(386-7185P1) (Raytheon) NPN Alloy

Q18 VFO Volt.Reg. 2N2926 GE NPN Silicon

Q19 HF OSC 2N2672 Amperex PADT

Q20 AF OUTPUT 2N2869/2N301
PNP Power

Q21 Power Inverter 2N443
PNP Power

Q22 Power Inverter 2N443
PNP Power

Q23 Ext.Linear Ctrl 2N2926 GE NPN Silicon


使用可能時間は最大30分?

    久しぶりに取れた休暇でカナダへ約1週間のドライブに出かける途中、 リヴァモアのスワップミートに立ち寄り、このSB-34を買いました。 家に帰るまで待ちきれずに、オレゴンのモーテルの室内でテスト。 HFのアンテナなどありませんが、 ラップトップ・コンピュータの電源ケーブルをゼム・クリップを使ってアンテナ端子に仮接続して試してみたところとりあえず受信できているようで、 7MHz帯で何局かCQコンテストを連呼しているのが聞こえました。

    ラボへ帰って改めてテストしてみると、音量こそ大きくないものの南米、オーストラリアなどの局が聞こえてきます。 ところがパイルアップを受けているDX局をしばらく聞いているうちに、感度が急速に低下し、 とうとうバックグラウンド・ノイズさえ聞こえなくなってしまいました。 不思議に思ってダイヤルを回すと、バンドのうち低い周波数では(たとえば14MHz帯の14.100MHz程度)ではまだ感度がありますが、 高い方(たとえば14.250MHz程度)ではすっかり感度を失っています。 仕方がなく低い周波数でCWを聞いていると、やはりそのうち感度を失ってしまい、やがてバンド内全域で無感状態になってしまいました。 やはりトラブル機のようです。

    翌日の夜再び電源を入れてみると、バンド全域で正常です。 昨日のトラブルは何だったのだろうと思いつつワッチしていると、約30分後にまたまた感度が急速に低下しだしてしまい、やがて完全に無感。 どうもこのリグの使用可能時間は最大30分のようです。 そんなことってあるの?

原因は熱

    あれこれ試して、症状は以下のようであることがわかりました。
  • 電源を入れた直後は正常に作動。
  • 20分程度経つと、ダイヤルの最も高い周波数側から徐々に感度が「むしばまれて」行く。
  • 感度低下は実際の信号のみでなく、バックグラウンド・ノイズも消える。
  • 約30分で、ダイヤル全域で完全に無感状態になる。
  • この現象は全てのバンドで同時に発生する。
  • いったん発生した後しばらく電源を切っておくと回復する。
    どうやらこれは温度が関係してそうな不具合です。 そういえぱこの現象が出ているときはカリフォルニアは夏まっ盛りで、 ガレージ・ドアを半開きにしているのに夜になってもラボはまだ暑い状態。

    いよいよケースを開けてみました。 筒状の金属ケースにはファイナルの真空管付近以外にはあまり通気口が開いておらず、 熱がこもりやすいのは確かなようです。 ざっと内部を観察。 ほとんどノーマルであるように見うけられます。 ケースを開けたまま使用してみると、発生するまでの時間がかなり延びるものの、 やはり長時間の後に無感状態になってしまいます。 このときリグ内部にうちわで風をあてると、感度が急速に復活します。 やはり熱によるトラブルです。 シャーシ上面に常時風があたるよう電源装置用小型空冷ファンを用意してやると、 何時間連続動作しても問題は発生しません。

問題箇所の特定

    推測するに、VFOの発振停止が真っ先に疑われました。 なぜか温度が高くなるとVFOの発振が停止し、 したがって中間周波信号を生成できなくなるというものです。 これは発生している現象をうまく説明できます。 事実、問題が発生しているときVFO基板上面だけに選択的に風をあてると感度が復活します。

    本機のVFOは、使用するバンドに関わらず 5.4569MHz から 5.7069MHz の範囲の周波数を発生します。 回路はトランジスタ2つからなっており、一つが発振用、もう一つがバッファ・アンプです。 マニュアルにも書かれている方法でVFO発振出力をチェックすることにしました。 すなわち別の短波ラジオをそばに置き、 VFO出力からリード線を引き出して短波ラジオのアンテナ端子付近に近づけるのです。 こうしてVFO出力周波数を受信すれば、Sメータの振れでVFO出力の変化をみることができます。 試してみればご名答、温度が高くなるとVFO出力信号が急速に低下し、やがてほぼ発振停止状態になります。


抵抗1本を追加

    現象を出しやすくするため暑いというのにガレージ・ドアを開けず、 汗びっしょりになりながらVFO回路のトランジスタの各端子電圧を測定してみたところ、 発振用トランジスタのエミッタ電圧が雰囲気温度に敏感に反応し、 これがある電圧を越えると発振停止を引き起こすことがわかりました。
    エミッタ電圧を限界値以内に押さえるため、バイアス回路に抵抗を1本追加。 これでVFOは連続使用しても安定に発振し続けるようになり、問題は修正されました。 ただし何が原因で問題が起きたのかは不明なままです。 トランジスタや抵抗などのコンポーネントが経時変化を起こしたためだ、と推測しています。


音が小さい!

    安定して受信できるようになったとはいうものの、どうにも音量が小さいままです。 使用しているアンテナが屋外に張った単なるランダム・ロング・ワイヤーであるとはいえ、 MFJのアンテナ・チューナ・プリアンプを通していますから、それなりに聞こえてもいいはずです。 マニュアルには、ボリューム・コントロールは50%の位置で室内で聞くのに十分な音量がでる、とあります。 しかし実際にはボリューム・コントロールをほとんどいっぱいにしてなんとか普通の音量が得られる状態。
    オーディオ段のゲイン不足だろうかと思いましたが、サンノゼのローカル局が出てくると猛烈な音量で鳴り、 あわててボリュームを絞らねばなりません。オーディオ・パワーアンプは正常なようです。 またオーディオ・ドライブ段の入力に例によってCDプレーヤの信号を入れてみると、 オーディオ・アンプは正常に動作していることがわかります。 スピーカから聞こえる音質はかなり乾いており、まさに通信機風です。 もっとも国際放送を聞くためのものではないし、問題ありません。

いよいよいじり出す

    SBE独自の、風変わりなAGC回路およびボリューム・コントロール回路になにかトラブルがあるのではないかと思われました。 どのみちこのままではアマチュア無線機としては実用になりませんから、いよいよ各部をいじりだすことにしました。
    本機のボリューム・コントロールは、単にオーディオ・ゲインだけではなくて、 中間周波増幅段のゲインおよびRFミキサのゲインをも制御します。 AGC信号もまた、RFミキサーのゲインを制御します。 高周波増幅と第一周波数変換 (RFミキサ) はシャーシ下側に独立したプリント基板として実装されています。 そこでこのRFボードが常時フルゲインで動作するよう、AGC信号とボリューム・コントロール信号を切り離し、 固定抵抗で一定の電圧を供給するようにしてみました。
    するとローカル局の信号が完全に飽和してしまいますので、 フルゲインで動作していることは間違いないようです。しかし通常の信号に対して十分な音量は得られません。

半田こてがリークしてる!

    AGC電圧の測定を容易にするため、RFボードの取り付けネジを利用してラグ板を追加し、 ここにIFボードのAGC回路から信号線を引き出しました。 AGC電圧の平均化のための電解キャパシタの容量抜けの可能性もありますから、 オリジナルのキャパシタを外し、代わりに未使用の同一容量品をこのラグ板に実装してみました。

    ところが半田付け作業中、こて先からパチっと小さな火花が飛ぶのが見えました。 リグの電源を入れてみると、あれあれ、全く受信できません! そのときリグの電源ケーブルは当然抜いてあったのですが、 シャーシはポンコツオシロにつながったままで、どうやらこて先がリークしていて電流がこてからオシロに流れてしまったようです。 なんともトホホな。

    吹き飛んだのは受信RFミキサ用のトランジスタ、2N2495 でした。 型番は異なりますが、送信用のRFミキサ・トランジスタと入れ替えてみると、感度は低いながら受信できています。 2N2495 または代替品を手に入れなければなりません。

    ハルテッド・スペシャルティ には同一品はありませんでした。 似たようなPNPゲルマニウムトランジスタを何種類か買って試してみましたが、どれも本来の性能が出せません。 トランジスタ互換表を調べたら、2N2495 には互換品なし。 ウエブのサーチエンジンも試しましたが、2N2495 に関するページあるいは取り扱っているサイトはみつかりませんでした。
    そうなると頼みは NTE 。独自の型番で多くのリプレースメント用トランジスタを販売しています。 2N2495の代替は NTE160。 ハルテッドに在庫があり、1つ買いました。値段は約4ドル、高いながらも背に腹は代えられません。 互換品とはいいながらパッケージが異なるので、RFボードのトランジスタ・ソケットには取り付かず、基板に直接半田付け。 受信感度は元の状態に戻りました。

    それにしても今後は要注意。 こてを当てるときは、リグの電源ばかりではなく測定用の配線も全て外すようにしましょう。 いい半田こてに買い替える、というのが本来の対策なんでしょうが。
SB-34 Testing

究極の調査方法

    さて問題の音量不足です。 各部の電圧を測定してみたり、信号波形を見てみたりしてみましたが、いっこうに原因が絞れません。 高周波段なのか中間周波段なのか、はたまたバランスド・ミキサが悪いのか。それともコリンズのメカフィル不良? あるいはこれがSBEの実力なのかも?
    毎晩努力し続け、なおも不明。 完全にスタックしてしまいました。疲れ果てた脳ミソが思い付いた究極の調査方法は・・・ 正常なリグと比較する! でもどうやって? SB-34なんか持ってる人、身近にはいないよ・・・。 そう思いながらインターネットをうろつていたら完動品の出物が! ヨメの承諾も得ずに、疲れ果てた私の指はマウスのボタンをクリックしたのでありました。
    2週間後、ラボのベンチには2台のSB-34が並びました。

2号機の改造

    1号機よりも高い額で買ったSB-34 2号機は、SBE純正のハンドマイクとマニュアル付きで外観も完全ノーマル。 十分な音量できちんと作動します。
    カバーを開けてみると、この2号機はあちこちに手を入れられた跡があります。 まず目につくのは、どこぞのクリスタル・キャリブレータ・キット基板が組み込まれていること。 SB-34純正オプションのキャリブレータ・ユニットは背面パネルに取り付けますが、それと電気的には等価な配線がなされています。 受信回路各部の電解キャパシタはほぼ全てが交換されており、特にAGC回路周辺はほぼすべてのポイントに半田し直しの跡が見受けられます。 前のオーナーも同様の努力をしたようです。そしてこのリグは正常に動作しています。 お手本としてこれ以上のものはありません。
    これまで1号機の作業中に、回路図と実機で部品の定数が異なっている部分が数多く発見されていました。 2号機に付いてきたマニュアルの回路図をみると、それは1号機に付いてきた回路図よりもリビジョンが新しく、 そして各部品の値は実機と一致します。 つまり1号機と2号機はほぼ同じリビジョンで、1号機に付いてきた回路図のコピーが古かったわけです。

サイド・バイ・サイド

    正常なものと比較する、というのは予想していた以上に強力な方法です。 なにしろ正解が目の前にあるのですから。 あとは根気良く間違い探しをやるだけ。
    大胆なテストとして、各基板を相互に入れ替えることを試してみました。 入れ替えるといっても基板をシャーシから外すのではなくて、基板相互の接続を切り離して、ジャンパー線でお互いをつなぐわけです。 この結果、問題は1号機のIFボードにあることがはっきりしました。 2号機のVFOボード出力、すなわち中間周波数信号を1号機のIFボードに注入すると音量は小さく、 逆に1号機のVFOボードと2号機のIFボードの組み合わせでは正常です。
    両機のメカニカル・フィルターを入れ替えてみましたが、変化ありません。 したがってIFボード上のメカニカル・フィルターは正常で、一安心。 もしこれが壊れていたら、部品代は(もし手に入ったとして)おそらくトランシーバ自体の価格の半分以上になってしまうでしょう。 値段からすれば、SB-34は全ての周辺回路付きメカニカル・フィルターみたいなものです。
    ダイオード4本で構成されたリング・モジュレータの検波出力を2台の間で比較するに、大きな違いはありません。 むしろ1号機のほうが高出力であるほどです。 オーディオ・ドライバ段以降の音声増幅および出力段の動作にも差は見られません。 これらの結果から、問題点はリング・モジュレータの検波出力を増幅する低周波増幅初段にあることがほぼ確定的になりました。

たかが1石アンプ

    初段低周波増幅段は、要するに1石アンプです。 こうなればしめたもの、特に難しいこともないはずです。 なのに、なぜこのアンプのゲインが不十分なのかわかりません。 簡単なアンプというものの回路的には別系統のマイク・アンプとつながっていますからそれと切り離してみたり、 送受信を切り替えるキーイング・コントロール信号を調べてみたり、違うトランジスタを試したり、キャパシタを交換したり。 はたまた全く別の1石アンプをこしらえて置き換えてみたり。 実に土日の2日間のほとんどを費やしながらも、まだ原因がわかりません。 私はいまだかつてアナログ回路の正しい教育を受けたことがなく、あらためて勉強不足を痛感しました。 トランジスタの基礎みたいなテキストをあらためて読み直し、また何か試し、違うテキストを読み・・・。

    たかが1石トランジスタ・アンプを修理できない挫折感のなか、取り外したいくつかの電解キャパシタをながめ、テスタをそれらに当ててみました。 品質のよさそうな黒いプラスティック・モールドの電解キャパシタは、俺はまだいかれてないぜといわんばかりに、テスタの針を一瞬振らせます。 ところが、そのうちのひとつはテスタの針を全く振らせません。 定格容量は10μF、少しくらい充電電流がながれそうなものです。これは・・・?
    リグを見直すと、このキャパシタは外したままで代わりのものは取り付けていません。 パーツ箱から取り出した別のキャパシタを取り付けてみたら---アンプは正しく増幅するようになりました!

    そのキャパシタの回路には0.1μFがパラに入っているし問題無いと思いこんでいたのですが、 それはエミッタに入った低周波バイパスで、これがないとアンプ出力が十分に出なかったわけです。 わかってみればなんとも基本的な! 無教養なアマチュア作業を恥じつつも、ガレージに響き渡るような豊かな音量に感慨無量。
    これはまた、どのアンティーク・ラジオ・レストレーションの本にも書かれている鉄則を立証するものでもあります。 つまり、「すべてのペーパー・キャパシタと電解キャパシタは新品に交換せよ。もしそれらが現在でも正常なら、それらは明日だめになる。」

今後の作業

    いじくりまわした暫定的な配線を元に戻し、RFオシレータの調整だけを取り直して作業を一段落させました。 1号機の感度はずいぶん改善されましたが、2号機と比較するとわずかに劣っています。 これは交換したRFミキサ用トランジスタに原因があるやもしれませんが、全体のアライメントを取り直す必要もあるでしょう。

    AGCの動作も気になります。 受信している信号の強弱に応じて頻繁にボリューム・コントロールをいじる必要があり、実用面で不便です。 これについては2号機もほぼ同じような状態なのでSB-34の本来の特性であると思われますが、 現状のままではどうにもメイン・リグとして使うには不満がつのります。 それがSBEの設計意図だったという見方もありますが、 私は完全オリジナル再生を旨とするコレクターよりはむしろ、機械は使うことに意義がある的なほうです。 し、手元に2台あるわけですから、1台を実用機に仕立てて、もう1台をオリジナル保存としておいても良いわけです。

    SBE独自のAGCとボリュームコントロールに見切りをつけてオーソドックスなオーディオ・デリバードAGCにし、 ボリューム・コントロールは通常のオーディオ・アッテネータにする。 別基板でAGCアンプを追加し、またSメータアンプを設ける。 内蔵スピーカを止め、外部スピーカあるいはヘッドフォンを使えるようにする。 ざっとこんなところがリストアップされそうです。どれも外観変更を伴わずにできそうです。

    アップルコンピュータ本社にほど近いわがラボには、マトモな送信アンテナはありません。 それゆえ送信部のテストはしていません。 一瞬だけPTTスイッチを入れた限り、送信動作はしているようです。が、どの程度のパワーが出ているのかは不明。 ボートアンカーのニュースグループなどを読んでいると、 SB-33/34系は送信部のパワー不足、またはパワー出ずといったトラブルが発生しやすいようです。 また、送信時の周波数ドリフトも問題のよう。これはひとつには冷却不足もあるでしょう。 実際にこのリグでオンエアするとしたら、こういった点もよくチェックする必要があります。

    ・・・それからすでに6年たち、復活プロジェクトは進展していませんが、止まったわけではありません。 このSB-34のテストのためだけに、新品のダミーロードとSWR/パワー計を買ってあるのです!
SB-34 at San Jose Lab

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Sep. 16, 1998 Created.
Nov. 22, 1998 Divided into multiple pages.
Jun. 16, 2001 English version, reformatted.
Sep. 10, 2001 Reformatted.
Sep. 14, 2001 Retouched.